訪問介護の危機は、在宅生活の危機!

コラム

現場の声届けます!
走る施設長、現場発信!かくた充由です。
 
新型コロナウイルスの影響で、審議が遅れていた来年4月の介護報酬改定の政府の議論で、訪問介護が取り上げられました
議論の最大の焦点は、在宅サービスの将来に向けて極めて深刻な「ホームヘルパーの人材確保の問題」でした。

政府推計によれば、地域それも在宅で、生活に何かしらの支援が必要となる高齢者世帯は、20年後の2040年には230万世帯まで膨らむ見通しになっています。
 
既に、ご承知の通り、これまで、在宅で暮らす高齢者の生活支援の柱となってきたのは、訪問介護事業所すなわちホームヘルパーと言われる人たちでした。
支援内容は、家事支援にはじまり、入浴や排せつなどの身体介護、通院を含む外出時の付添、その他、相談助言といった心理的サポートまで多岐にわたります。
要支援者の数に関わりなく、今後も、訪問介護事業が、在宅サービスを支える重要な仕事として位置づけられるのは間違いありません。
 
しかし現在、訪問介護事業者の倒産件数は激増しており、介護保険法が開始された2000年以降では最多となりました。深刻なのは、倒産の傾向が今後さらに増える見込みとなっていることです。
 
経済産業省では、「介護職の全体の人材不足については、2035年には約79万人の不足が生じる」と発表していますが、ホームヘルパーに関しては、既にと危機的な数字になっています。
加えて、募集をしても人員がまったく集まらないという事業所が現在9割と、極めて厳しい状況が、今なお続いています。

ホームヘルパーの人材不足の要因は、大きく二つの理由があると言われています。
一つは、「ホームヘルパーの高齢化」です。
現在の全国のホームヘルパー年齢構成を調べてみると、女性の比率が多いなかで、約4割が60歳以上となっています。
一般の施設の介護職の年齢構成が、30歳から49歳であるのと比べると、非常に高い年齢層となっていることが分かります。
これは、裏を返せば「若い有資格者は、ホームぺルパーになりたがらない」とも言えるのではないでしょうか。もっとも、施設の介護職の場合、必ずしも有資格者でなくても介護職に従事することが出来ますから、一概には言えませんが・・・。

ふたつ目は、「ホームヘルパーの賃金」です。私は、賃金に加え、雇用環境の問題も根強く、この問題が非常に深刻だと感じています。
 
厚生労働省が発表した、平成29年度の介護労働実態調査では、ホームヘルパーの月間平均給与は、19万8,486円
これは介護職員全体の21万1,464円に比べて、2万円下回っており、日本の全産業の平均月給である、30万4,300円とは、何と!10万円以上もの開きがあるのです。
 
この給与額を見てみても、今後の必要性や、経験や責任の重さからみても、決してホームヘルパーという専門職の価値に見合った給与でない事が見て取れます。
 
介護職の人材不足に対し政府は、「離職した介護職員に対して再就職準備金制度貸付」などの対策をしてきました。
これにより、日本の約4割を占める潜在介護士の呼び戻しも行ったとされますので、一定の成果はあったのだと思いますが、喫緊の課題であるホームヘルパーの人材確保を実現するには、再度施策に関する議論が必要だと感じています。

10月22日におこなわれた、社会保障審議会・介護給付費分科会では、私の大先輩でもあります全国老人福祉施設協議会の小泉立志理事が「訪問介護の経営は人手不足で先が見えない。労働条件の改善が可能となる報酬にする必要がある」と発言されています。
私もホームヘルパーの人材確保については、率直に「若い世代が参入したい」と思えるような、給与、報酬体制しなければ、現在30代未満のホームヘルパーが13%しか確保できていない状況を打開し、スピード感をもって変えるのは難しいと思っています。
さらに今回の有効求人倍率を見て取ると、新型コロナウイルスの影響で、仕事を求める人は増加しているものの、介護業界には偏見などがある為でしょうか、他職種の人材が参入してこない事が浮き彫りになっています。
 
それどころか、新型コロナウイルスで経済が落ち込んで先が見えない今、来年の報酬改定次第では、今、介護業界で仕事をしている職員ですら、賃金や雇用環境を理由に他産業に一気に流出する可能性さえあり得る、まさに待ったなしの危険性さえはらんでいる状態だと感じているのです。
私としても、報酬改定までの5ヵ月間、全国老施協や様々な方向性から、介護の現場を守る処遇改善と報酬改定プラスを強く要望して働いていきたいと思っています。
 
また来週も皆さんと元氣で健康にお会いできる事を心より楽しみにしています!
WELFARE,NO LIFE!