特定処遇改善加算の現在地。

コラム

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走る現場の施設長、かくた充由です。

今日は、私たちの賃金に大きく影響する特定処遇改善加算について触れたいと思います。
特定処遇改善加算は、介護職の賃金、待遇改善、また離職を減らすことにつながる新たな制度として、2019年10月1日からスタートしたのはご存じの通りと思います。
これは、それまでに創設されていた処遇改善加算とは別に、「勤続年数や経験や技能のある、介護福祉士らリーダー級職員の賃金アップ」を目指したもので、今までの処遇改善加算と違い、対象として「勤続年数や経験や技能、資格をもっている職員を対象としている」ことです。
取得には、「月給8万円の賃上げをする職員をひとりつくる」、「年収440万円を超える職員をつくる」のいずれかが挙げられ、職員への賃金の配分対象としては、先ほど挙げた「リーダー級、経験、技能、資格のある介護職」、「その他の介護職」、「介護職以外の職員」に3種類にカテゴリー分けされていますが、この配分方法や裁量については各法人、事業所の委ねられています。
また、その他にも「リーダー級、経験、技能のある介護職は、その他の介護職の2倍の賃上げ」しないといけない、「介護職以外の職員の賃上げ額は、その他の介護職の半分以下にする」など、導入にはこれらの基本ルールに従わないといけません。

では、実際にこの私達の大切な賃金に関わる、特定処遇改善加算は、現在どのくらいまで進んでいるのでしょうか。
現在の各調査機関の結果では、サービス全体の加算の取得率は約57%で、月ごとに少しずつ上がってきてはいるものの6割にも満たない事がわかりました。
また、サービスごとに取得率が高かったのは、特別養護老人ホーム83%、ショートステイ79%、など、逆に取得率が低かったのは、訪問介護45%、地域密着型サービス31%、介護療養型医療施設に至っては27%とサービスによって大きな開きがあることもわかりました。
なぜこれだけ取得で開きがあるのでしょうか。
これまで、全サービス事業所の76%が「特定処遇改善加算を取得したい」という要望があるものの、現在6割にも満たないこのペースで推移しているのは、算定要件の多さと複雑さだけでなく、背景には、法人の規模や財源、人材などの格差が要因としてあると言われています。

そして、この特定処遇改善加算のバランスで、一番大きな問題となっているのは、増収分の「配分方法」にあります。
この問題に関して、福祉医療機構のアンケートでは、55%の施設が特定処遇改善加算の「介護職員内の配分方法の決定が難しい」と感じられており、その他の介護職員への配分や、対象外の職員との賃金バランスの調整でも、給与の逆転現象が起きたりと半数以上の施設が苦慮していると答えています。
このバランスや、格差を埋めるために法人持ち出しで賃金を調整している事業所も、35%あるというのも調査結果ですが、これも法人の規模によって財源を支出できる法人ばかりではありませんので、すべての法人でこの手法を取り入れる事はできません。
つまり実際のところ、この加算を「生かせている事業所と、生かせていない事業所で大きなギャップが生じている」、逆に事業所によって、この嬉しいはずの加算が「悩みの種になってしまっている」というのが現状ではないでしょうか。

政府が考える、今回の特定処遇改善加算の目的は、「介護職の定着率を挙げる」ことにあります。
職員がその法人や事業所に定着するという事は、利用者にとって家族以上にもっとも信頼できる人間と、最も強い絆となじみの関係をひとつの場所で続けていく事が出来るというとです。職員が、定着をせずに、賃金などを理由に、あちこちの施設を転々と移動するという事になれば、今までのなじみの関係が少しずつ崩壊し、日本全体の介護の質自体も少しずつ落ちていく事にも繋がっていくと思いますから、その方向は絶対に間違っていません。
しかし、つくられる加算の内容によっては、これから法人自体が職員に「選ばれない」の選択肢も出てくると思いますし、本来定着率を挙げるために作られた加算が逆効果になる可能性が生じます。さらには加算内容によってその施設の人材確保にも大きな影響が出てくるのは明白です。
来年4月には、いよいよ介護保険制度改正が待っています。今回の特定処遇改善加算に限らず、これから新しく作られる制度、施策については、法人や事業所の規模に限らず、格差なくどの施設でも活用できる制度設計されなければならないと思いますし、その声を届けるのも私の仕事のひとつだと思っています。頑張りましょう!

WELFARE,NO LIFE!