「介護現場の負担」は軽減したのか。

コラム

現場の声届けます!
走る施設長、現場発信!かくた充由です。
 

昨年12月に決定が下された介護報酬のプラス改定、皆さんはどう捉えているでしょうか。
今は、どこの施設でも、次期改定に向けての情報が日々入ってきており、情報収集や準備に追われているのではないでしょうか。
私のところにも報酬改定に関するオンライン講習やファックスが毎日の様に届いています。
 
既に何度もお伝えしている通り、今回の介護保険制度改正は、新型コロナウイルスなどの感染症対策と災害対策に重点がおかれ、ICTやテクノロジーの導入の利便性の向上、科学的介護の推進、そして「介護現場の負担軽減」の方向性が取り上げられました。

 
政府は今回の改正における現場の負担軽減として、指定申請や更新手続き、加算項目に関わる文書の書類の削減の議論や、そして押印や署名の廃止などを取り上げましたが、果たしてそれは介護現場の負担軽減に繋がるのでしょうか。
 
残念ながら、私は今回の改定で示された内容では、介護現場の負担軽減にはならないと考えています。何故ならこれらの業務は、介護現場と言うよりも、多くは管理者や事務局、生活相談員などに関わる「間接業務」であるからです。
 
もちろん私たち施設長などの管理職も、「介護施設」という枠で捉えるならば、現場の人間である事は間違いありません。
しかし、真の現場とは、日勤夜勤をこなして毎日利用者のそばでケアに当たっている前線職員ではないでしょうか。
 
そういった意味では、今回の負担軽減とは、あくまで「介護施設」の業務負担軽減であり、「介護現場」の業務負担軽減ではないのではないかと思います。
 

つまり今後、政府に現場の声として訴えていかなければならない事は介護現場にかかる負担軽減という事になると考えています。


また、今回の改正では、介護現場でのICTやテクノロジーの進化が目玉改正となりました。
しかし、こういったテクノロジーを導入するには、施設の資金力が大きく影響してきます。
職員の負担を減らす介護現場の記録の生産性向上もお金と引き換えに手に入るものです。
 

こうしたテクノロジーの活用を全国の介護施設が享受できればこれは素晴らしい事でしょうが、最新の危機を導入できる事業所は、一体、全国にどれだけ存在するでしょうか。更に言えば、今後、推進されるであろう、LIFEやビジッドなどのデータベースからの加算取得などは、新たな現場の業務負担となる危惧も含んでいます。
 
他方、経過期間はあるものの、次の介護保険制度改正までの3年間に、各事業所では感染症対策や災害に関する新たな運営基準の策定、業務継続計画(BCP)の策定、委員会の開催や指針の整備、研修の実施なども義務化される事も決定しています。
その他にも同様に義務化された書類整備を含めると、今回の改正は、むしろ「施設全体としての業務負担は増加した」と捉えるのが正しい見解なのではないでしょうか。

全国にある、一定規模以上の介護施設は、今後新しい様々なテクノロジーや機器なども導入が進むでしょう。人材においても業務が増加してもそのメリットを受けられる施設も一部はあると思います。
ですが、小規模の施設であったり、新規の事業所などはどこまでこれからの「政府の方針」について来られるのか不安がよぎります。
 

政府が進めている協働化などの議論もありますが、そう簡単に進むものでもないと思いますし、果たして現在の日本の高齢化のスピードにそれら制度が追いついて来られるのか疑問にも感じています。
 
私たち介護の仕事は、社会保障費を含む、日本国全体の方針に関わってくる仕事であり、私自身は「国職」だと思っています。
 
恐らく、これからの超高齢社会は、すべてのICTやテクノロジーを駆使して、介護事業所総動員、総活躍して、ようやく政府が求めている(イメージしている)サービスが提供できるのではないかと思うのです。国民全員の総動員・総活躍は、言葉で言う程、たやすくはなく、現実には高い壁だと思っています。

次の次の3年後の介護保険制度改正に向け、私たち現場は、介護現場の「本当の現場の負担軽減」と、ポイントがずれていない業務の効率化」を、政府に要望しないといけません。

 
私も自分の立場でしっかりと届けていきたいと思いますが、介護の現場に関わっている職員誰しもが「私たちは黙っている時代ではなくなった、自分達で現場をつくる」という価値観や意識の変化がこれから益々問われていると感じています。
WELFARE,NO LIFE!