科学的介護へのパラダイムシフト

コラム

現場の声届けます!
走る施設長、現場発信!かくた充由です。
 

新型コロナウイルスに翻弄される毎日ではありますが、皆さん如何お過ごしでしょうか。
今日は、私たち介護に関わる人間にとって、重要な変化となり得るふたつの事について、お話したいと思います。
 
ひとつ目は、いよいよ目前に迫った「新型コロナウイルスのワクチン接種のスタート」 
既に、医療従事者から接種が始まっていますが、私たち介護職にとっても(もちろん国民全体にとっても)、日本にとっては前例のない国家プロジェクトとなりました。今後、他職種、政府、自治体、地域、医療体制の広域的な「連携」の重要性を意識して、現場体制をしっかり構築していきたいと思います。
 
ふたつ目は、「介護報酬改定への準備と対応」です。
令和3年度の介護報酬改定については、介護職員の人材確保と処遇改善に配慮しながら、全サービス共通の事項として感染症・災害への対応強化、ICTの活用などの推進が進められましたが、同時に、「介護サービスの質の評価と科学的介護(科学的根拠に基づいた、現場の介護の質の向上)の取組の推進、テクノロジーの活用」が求められる事になりました。

こうした「科学的介護」の必要性については、私たち全国老施協もかねれから提唱してきた政策方針ではありましたが、CHASEVISIT(統一名称・科学的介護情報システムLIFE)の運用が始まり、このシステムから新たな加算評価(科学的介護推進体制加算)がスタートします。
 
これは、施設、通所、多機能、居住系など、事業所の利用者に係るすべてのデータが評価対象とし、事業所ごとにPDCAサイクルをまわして、ケアの質の向上の取組を推進することを目指しています。
 
つまり、これから私たちは施設での利用者の身体的・精神的な改善を評価、いままで可視化しずらかったものを数値化・客観的に評価していく事で、自立支援や重度化防止につなげていく事を目指していかねばなりません。
 
一般的に今まで介護の現場では、これらのサービスは可視化する事が難しいとされ、評価に繋げていく事が難しいとされてきました。
しかし一方で、医療の現場では、かねてより、DPC(診断群分類包括評価)などの導入により、データの標準化が進んでおり、証拠や事実に基づいた議論や対応が行われています。
 
介護現場においても同様に、アウトカム評価(成果や結果を評価)が標準化していく事が予想され、利用者のADLレベルが維持・改善された場合には、それに見合った評価が加算され、またそれによって介護事業者のモチベーション維持・向上経営的な追い風になる事が期待されています。

新たな国民病ともいえる「認知症の改善への取組み」についても、数値化・客観的評価のプログラムが進められています。
 
特に、認知症の周辺症状(BPSD)など、認知症の周辺症状とも言われる行動・心理症状について、こういった科学的介護を用いた可視化・数値化が運用されれば、認知症の方に対して改善に向けて適切なケアが実践できるものと期待されています。
 
介護現場においては、今まで数値的なものや機械的なものはどちらかというと敬遠され、尊厳から外れてしまうのではないかといった意見や感覚もあったのは確かだと思います。
それは、人間を数値で評価、測るものではないといった差別意識からきているものと思いますが、一方で、認知症の周辺評価(BPSD)の評価尺度であるNPI―NHなどで合計点を判断した場合は、改善に向けて施設職員同士の情報の共有や数値目標として、状態の推移目標も立てやすくなるといったメリットがありますから、介護現場においても治療に向けて大きく役立っていくものなのです。
 

私も介護の現場で20数年働いていますが、これから求められてくるものは、今までの常識や感覚と違った私たち介護現場職員の「意識の進化」でしょう。
もちろん、現場職員がそれに慣れていくのもある程度の時間も要すると思っています。
しかし、少しずつの現場の積み重ねが、介護職の社会的な「評価」「介護の質」につながっていくのも事実です。
 
今から少しずつでも、介護の現場での利用者の方のデータを蓄積していき、いかに利用者が望む、「最も効果的な介護が提供できるか」を再認識する。
それが私たち介護職に課せられたパラダイムシフト(当然だと思っていた事が、新しいものに劇的に変化していく事)だと思っています。

私たち介護に関わる仕事は、そのどれにも関わっている大切な職種であり、これから国を支えていく「国職」でもありますから、まずは身近な利用者や職員さんとの「繋がりを大切に」共に現場から声をあげていきましょう。
WELFARE,NO LIFE!