介護施設の事業継続計画(BCP)

コラム

現場の声届けます!
走る施設長、現場発信!かくた充由です。
 
介護報酬改定の適用まで、あと少しとなりました。
今日は今回の報酬改定で、新たに設けられた「災害への地域と連携した対応の強化」について触れたいと思います。
介護従事者ならば、2020年、熊本県球麿村の特別養護老人ホーム千寿園で入所者14人犠牲になった豪雨災害を覚えている方も多いと思います。
千寿園は、球麿村唯一の特別養護老人ホームで、地域福祉の重要拠点でした。村民からは早期の事業再開を求める声もあがっており、千寿園を運営する社会福祉法人慈愛会は、2021年度に元の場所に隣接する別の場所に、プレハブ型仮施設を作り運営を再開する方針を出しています。
千寿園の立地する場所は、88%が山間地域で、そこに隣接するわずかな平地も、多くが河川に集中しており、毎年のように起こる水害にどう備えていくべきかなど、様々な課題が残されています。
全国には同じような立地条件にある施設が多く存在し、そんな運営法人にとっては他人事でなく、避難計画の策定の重要性を思い知らされる出来事になりました。

今回の改正では、介護施設での災害対策への備えとして、事業継続計画(以下BCP)の策定が求められる事になりました。
 
このBCPとはbusiness continuity planの略であり、ビジネス、コンティニュイティは継続、プランは計画と解され、自然災害や事故などに直面しても、「事業」を中断させずに、また一時的に中断しても速やかに復旧し「継続」させるための「計画」の事を指しています。
 
万が一、予想をはるか超えた自然災害、緊急事態が起こったとしても、私たち介護施設は運営を止めるわけにはいきません。
限られた資源と人員を総動員して、優先させるべき事業を継続させ、そして可能な限り素早く日常の生活に利用者を近づけていく事が求められます。
その手順がBCPであり、各々の運営法人において、方針や計画を決めていく際、千寿園や全国の被災地の教訓を生かす事になるのでしょう。

BCPの策定には自然災害のみに限った事ではありません、
現在、全国的に取り組んでいる新型コロナウイルスなどの感染症対策においても役立つものと期待されています。
 
介護施設におけるBCP対策で特に大切とされているのが、事態が発生した際の「利用者の生命と健康を守ること」、「施設の維持」、「意思決定と情報伝達の仕組みづくり」です。
 
今回の介護報酬改定におけるBCPの義務化は策定まで3年の猶予が与えられていますから、各施設、事業所の実情と照らし合わせて策定を進められればと思います。
皆さんの施設では、今何が足りていないのか、導入すべきものがあるのであれば、常に最新の情報にアンテナを立てておく必要もあるでしょうし、予算の確保が必要なものも含まれてくると思いますので、同時進行でもじっくりと進めていければと思います。

10年前のあの日、私は車の運転中で、目の前の信号機が大きく振れ、街並みの店のガラスや壁が崩れるのをただ茫然と見ているしかできませんでした。
自分の施設に連絡してもまともに対応できる状況でなく、経験した事のない自然災害規模に、思考回路が持ち直すまで時間が必要だったのを覚えています。
栃木ですらこれですから、福島や東北等、津波の被害が発生した現場や原子力発電所の被害が発生した現場は、どれほどの惨状だったのか想像もできません。
あの時に、BCPなどの決め事がされていれば…事態はどう変わったのだろうかと思います。
自然災害の過去の教訓を糧に、これからBCPの策定しっかりと形にしていきましょう。

WELFARE,NO LIFE!