本人の意思の尊重について

コラム

現場の声届けます!
走る施設長、現場発信!かくた充由です。
 
皆さん、いかがお過ごしですか。
今週は、少し視点を変えて、障がい者や高齢者の皆さんが判断能力が不十分になってしまった場合の意思決定の在り方について書きたいと思います。
 
私たち介護や福祉の現場では、毎回サービス利用のたびに事前説明をおこない、利用者と事業者との間で契約を結ぶしくみになっています。
私のこれまでの経験値から、この契約については本人よりも、ご家族の意思の決定が強いといった傾向が強いのではないかと感じています。

実際の事象に関する是非はともかく、これからの日本において、個人の判断能力が低下した場合においての財産管理や、施設のサービス利用の意思確認は、今後の日本にとって大きな課題になってくるに違いありません。
 
国はこれまでに、判断能力が不十分な人に対しては、成年後見人制度日常生活自立支援事業などの制度を用意し、サービス利用や財産管理を行っていく政策をすすめてきました。
 
法務省によると成年後見人制度は、「認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力の不十分な方々の、不動産や預貯金などの財産を管理したり、身の回りの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり、遺産分割の協議をしたりする必要がある」としていています。
また、悪徳商法などの自分に不利益な契約があったとしても、それらを守る制度としています。

この政策は、一定程度の効果をもたらし、必要な政策であったと思いますが、同時に、介護や福祉の現場では「サービス利用や支援の際、はたして本当にその利用者の意思決定が反映され、支援が提供されているか?」という問題意識が持たれてきました。
 
また、医療の現場などでは、成年後見人の権限の範囲が及ばない行為であるにもかかわらず、「医療の現場から、医療行為の同意を求められてしまう」といった大変判断が難しいケースも抱えてきました。
 

今日は、一つの考察として、これら国内課題を、意思決定制度の先進国でもあるイギリスの英国意思決定能力法(MCA2005)を比較し、基本理念を考えてみたいと思います。
 
イギリスの英国意思決定能力法(MCA2005)は、障がいや認知症がある人であっても、すべての人には判断能力があることを前提とする意思決定能力の存在推定原則をもとに、「判断能力が不十分な状態であったとしても、支援などを受けた上での自己決定をすることができる」ような社会システムが目指されています。
 
本人の判断が不十分な状態であったとしても、完全に「能力を欠く」と確定されない限りは、その人は「能力がある」と考え、まわりの人間がサポートすること。そしてあくまで本人の意思決定を何よりも尊重すること。また、自己決定の原則に従い、周囲は「必要最小限の介入」で、本人の理解力や判断力が低下している時期などは避けで少しでも本人の意思が伝わる場面を選ぶなどの、あくまで「個人の尊厳と尊重」に強いおもむきが置かれているのが特徴で、日本と比べると当事者に対して丁寧かつ慎重にアプローチしている制度なのかがわかります。
 

イギリスの意思決定能力法(MCA2005)は、より本人に対して寄り添った考え方があるということがわかりますが、ただ緊急的な医療的対応、治療が必要な場合では、早めに意思を把握する場面もあると思いますので、やはりそこは日常的にかかりつけ医であったり、家族の方との話し合いで、介護、医療の提供の意思の確認を元氣なうちの普段の生活の中から確認しておくことがとても重要なことだと思います。
 
日本の意思決定の在り方については、平成27年(2017年)に厚生労働省の社会保障審議会の部会のなかで話し合われ、報告書を公開し、ガイドラインを作成したばかりです。
正に、今、現在進行形で、日本もイギリスの制度等を参考にして、「自分自身がしたいと思う、意思が反映された生活が送ることが出来るように」日本版の意思決定能力法の在り方や構築が進んでいるところです。
 
日本は、少子高齢者社会の中で、認知症等の理由で判断能力が低下した人へのサービスや支援が必要となったという話はすでにめずらしくない話となってきています。
こうした時代に、高齢者や障がいを持っている方人々の、個人の尊厳の在り方については、これから家族も含めて私たち介護従事者も考える必要があるでしょう。
 
イギリスでは、当事者の権利擁護に関しての意識が、2012年に開催されたロンドンオリンピック・パラリンピック時を契機に大きく変わったとの報告もあります。
 
今年、国民の賛否が分かれる中で、オリンピック・パラリンピックが開催される日本にとっては、「個人の尊厳」や「本人の意思決定」を国民全体で考える、大きな意識の変化のチャンスを迎えていると思います。
 
今こそパラダイムシフト(価値観の変化)の時期なのだと思っています。
WELFARE,NO LIFE
 
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