賃金改善から抜本的改善につながるために

コラム

現場の声届けます!
走る施設長、現場発信!かくた充由です。
 
11月11日は介護の日のイベントでした。
 
皆さんは、この介護の日をどの様にすごしたでしょうか?
 
厚生労働省の説明によると「介護の日は、介護に関する理解と認識を深め、介護サービス事業者・介護サービス利用者・介護をする家族」を支援する目的から新たに設けられた」とあります。
 
これを受け、私は、介護従事者にはこの介護の日に「政治(政策)と介護事業について思いを馳せる日」にしてはどうだろうか?と思います。
※これまでのブログでも、政治と介護事業との強い繋がり=関係性については、何度かお話しをしてます。
 
実際、岸田新総理は、首相就任の際に「看護、介護、保育」などの賃金、待遇改善策に触れています。
特に「看護、介護、保育」に関連するエッシェンシャルワーカーの現場で働く職員の収入アップを最優先の課題として、今後必要な会議、措置を行い前倒しで賃金の引き上げを実施するとしました。

今までも「介護、保育」の現場においては、その待遇の低さがしばらくの間大きな課題とされ、昨今において政府において殊遇改善策などが勧めれてきましたが、依然として全産業の平均賃金と比べると低い割合となっており、今後の短い期間のなかでどれだけ捻出する財源などを捻出していけるかが焦点になってくると思います。
 
岸田首相は、今回のこの「看護、介護、保育」の現場の賃金アップの意味合いをエッシェンシャルワーカーのみの処遇改善だけと位置付けず、日本国内の全産業の格差の解消への起爆剤、公的価格をあげることで、他の職種全体の賃上げをするための「呼び水とするとしています。
 
この件について、翌日の政府の発表では、介護職と保育職の賃金を月額で3%にあたる約9千円を引き上げる方針を固め、実施時期は早ければ来年の2月から補正予算のなかから捻出し、交付金として一括支給する方針としました。
 

私自身も約二年前にこの介護、福祉従事者の賃上げを、まずは大きな目標に国政に挑戦したものですが、いう間でもなく今までもこれからも、介護職、保育職は社会にとってなくてはならない職種であり、この賃上げについては大賛成です。
そして今回の賃上げ額について、恐らく多くの介護や保育従事者の皆さんのご意見もさまざまだとも思います。
 
介護現場にとってこの9,000円という額が「多いのか少ないのか」。
 
正直、「それほどか」と感じる方もいるでしょうし、「ようやくか」と感じる方もいると思います。
ですが、この数十年間、この賃金や待遇の低さが課題となっていた私たちの業界にしてみれば、まず第一段階としてこの政策は望ましい方向性に動いたと評価していいと思います。
私たち、介護、福祉従事者は社会的責任や使命をもって、このコロナ禍だけでなく今までもずっと厳しい労働環境のなかで仕事をおこなってきました。
実際に介護や福祉の仕事が好きで続けたくても、現在の条件下ではやむなく離職せざる得ない職員も数多くいると思っています。

個人的な意見ですが、正直、今回の9,000円の賃金アップが実現したとしても、介護職、保育職の現場での不満や不安は解消されないと思います。
なぜならば、今、介護や福祉の現場で持ち上がっている一番の課題は、賃金問題ではなく、人材不足などによる「業務負担の圧迫」だからです。具体的に言うと記録の多さや事務的な書類作成、そして申請に関する手続き、そして人員配置基準など、そういったものが見直されされ、賃金に見合った業務負担が解消されない限り、満足に介護や福祉、保育の現場でサービスが提供される体制にならないと思うからです。
本来、「処遇」とは、「その立場を評価して」、「それに相応しい取り扱いとする」ことを指しています。
介護や保育のその社会的な責任を重さからすれば、その価値に見合った処遇の抜本的な改善を是非この機会から進めていって頂きたいと切に願いますし、私自身も現場の声を届けていきたいと思っています。

私が毎回コラム末につけている「welfare」「福祉」として訳されることが多くありますが「福利厚生」とも訳されます。
つまりそれは手段であり、目的ではありません。
では、介護や福祉はその手段をもって何を目指すのでしょうか。それは、「well-being」、「幸せ」です。
 
私たちは何を目的に介護や福祉の仕事をしているのでしょうか。
それは「福祉」という手段ではありません。
その先の利用者様や、またその利用者様を取り巻く、ご家族や関係者をも「幸せ」や「笑顔」に少しでも近づけるために、それを思い描いて仕事をしているのだと思います。
 
日常の業務でふと忘れてしまいがちですが、「介護の日」をそういった意味を再確認する感謝の機会として、当法人職員、全国の介護従事者の皆様に、感謝の意味を込めてこのコラムの締めにあらためて「有難う」と伝えたいと思います。

WELFARE,NO LIFE
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