権利擁護等推進事業での発表

コラム

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走る施設長、現場発信!かくた充由です。
 
過日2月28日、令和3年度「栃木県高齢者権利擁護等推進事業」の実習結果と内容を県内施設、行政関係者を対象にリモートで発表させて頂きました。
高齢者虐待の件数は、介護従事者によるものは年間595件、家族や親族から受けたものが1万7,281件です。
虐待の背景は介護スタッフや家族の介護ストレス、また虐待行為に対する知識不足などさまざまなことが指摘されています。
特に施設サービスについては、身体拘束から虐待に繋がるケースも多く、こういった行為はご利用者の身体的なものだけではなく、高齢者の「精神的な意欲の低下」「認知症の悪化」に繋がるものとして大きなリスクが取りあげられています。
 
本来は、こういった行為に対しては介護スタッフが先頭に立って、虐待や拘束と真剣に向き合い、積極的に学び取り組まなければなりません。
 
現在は高齢者虐待防止法などで、「身体拘束の禁止」や「通報の義務」が明記され、家族に対しても負担軽減の対応を図る様に、その防止に向けた整備が進められ来ました。

知っていないといけないのは、高齢者虐待には一般的に知られている「暴力行為」だけではなく、「心理的虐待」、介護放棄である「ネグレクト」「経済的虐待」「性的虐待」などさまざまな種類に分類されることです。
 
しかもコロナ禍にあって、この虐待件数は増加傾向にあり、また人と人との接触や触れ合いの機会が喪失されていることにより発見が困難な状況、またその介護ストレスによる影響も大きくなっている事が報告されています。
 
高齢者虐待につながりやすい要因として挙げられるのは「拘束行為」でしょう。
 
拘束についても、いくつかの拘束の種類に分類されています。
 
身体的な拘束である「フィジカルロック」、薬物の過剰投与などで利用者様の行動を制御する「ドラッグロック」、そして言葉で利用者様の行動を制限してしまう「スピーチロック」です。

私が今回、栃木県での発表をさせてもらったのは「スピーチロック」です。

「スピーチロック」は、「フィジカルロック」、「ドラッグロック」と比べて、誰でも簡単に利用者様の行動を制限できてしまう最も簡単な拘束行為です。
また、フィジカルロックやドラッグロックと違い、、拘束具や薬品といった道具は必要ありません。
ゆえに、人材不足が叫ばれている介護施設ではこの「スピーチロック」が起こりやすい環境と言えます。
特に仕事が忙しいときなど利用者様に対して「ちょっと待ってて!」などの声掛けは使われている事は多いのではないでしょうか。
この「ちょっと待ってて」という言葉ひとつをとってみても、声をかけられた利用者様側としてみれば、では「どれくらい待てばいいのか」、いつ来るのかわからないため利用者様はひらすらその場で待つしかありません。
結果的に、スタッフとしてみればそんなつもりはない、日常的な声掛けのなかにもこういった利用者様の行動を制限している「スピーチロック」は含まれているのです。


では、どうすればいいのでしょうか。
 
今回私の施設では、ひとつのユニットを対象に「ユニット内のスピーチロック対策」として約2ヵ月間、スタッフと実習を行わさせて頂きました。
 
実習の内容は、現在のスタッフの拘束への捉え方を知るためにアンケート形式である「虐待の芽チェックリスト」を実習の最初と最後に実施。
実習期間中に先に挙げた「拘束行為」がどういったものがあるのか勉強会を開催。
そして1週間ほどスピーチロックに対しての取り組み期間を設けユニットスタッフ同士の相互チェックや個別面談をおこないました。

実習を終え、スタッフのコメントからは、こういったスピーチロックに関しては理解していても忙しい時は「つい」、「とっさ」に出てしまうもので、事業所としてスピーチロック対策のためにも、「言い換え言葉表」などをつくるなどして利用者様への声掛けの内容を改善していく必要があるとの意見がでました。
 
「言い換え言葉」は、例えば先ほどの「ちょっと待ってて」の言葉なら、明確な訪れる時間を利用者様に伝え「トイレ介助をおこなってから10分後に伺います、お待ちください」など、具体的に言葉を正しい言葉に「言い換える」ことを言います。
 
また、スタッフのコメントから言い換え言葉をつかって業務をおこなった結果、「利用者様の表情が変わった」「笑顔での会話が増えた」「以前よりも頼ってくれるようになった」などの効果が得られました。

そして、この実習を通してスピーチロックの理解が進むなかで「精神的に業務がスムーズに出来るようになった」との声がありました。
スタッフとしては「利用者様に対して、今まで正しい対応ができなかったことは、自分自身にとってもストレスになっていた」、「どこかの機会で変えなければ」という意識は常にあったとの事でした。
 
今回の実習を通じてこのスピーチロック対策に取り組んだことは、利用者様へのサービスの質の向上だけでなく、結果的に「スタッフのストレスケア」にも繋がったというのは大きな相乗効果でした。
介護の日常のなかにあるもっともありふれていて大切な行為である「言葉かけ」、まずそこから意識することで将来の大きな質の向上につながっていくことに期待感がもてる実習でした。
私自身も普段からの「言葉」に対して注意をはらい、周囲の関係に配慮ある生活を送りたいと思っています。
WELFARE,NO LIFE!
 
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