ICTでは出来ないことがある。

コラム

現場の声届けます!
走る施設長、現場発信!かくた充由です。
 
今日は、最近政府で議論されている介護現場の「ICTの活用」、「生産性の向上などの風潮ついて書きたいと思います。
 
2021年12月21日、日本経済新聞で気になる記事が掲載されました。
それは「ICTを導入して、介護職員の配置基準を緩和する」というものです。
 
「いかに少ない人数で介護の現場の生産性を上げていくか」、「介護従事者の個人の質をいかにあげていくか」ついては、これからの介護現場の人手不足や、働き手の減少や高齢化などで、もっぱら政府によって様々な議論がされているのが現状ですが、そこで生まれてきたのが、ICTなどのテクノロジー導入であり、生産性向上や効率化の議論です。
 
私たち介護現場は、どの業界と比べても慢性的な人出不足が深刻であり、そのなかで、いかに現場の生産性をあげていくか、業務負担を効率化して職員の数を制限していくかなどは、業界にとって大きな課題であり問題なのは間違いありません。

恐らくこのICTの活用や、ロボットなどのテクノロジーの導入について、令和6年の介護報酬改定などにおいてもスポットがあたる議論になっていくでしょう。
テクノロジー活用によって現場の介護職員を減らそうという動きすら有ります。
 
しかし、この議論については「生産性」や「効率化」といった聞こえの良い言葉とは裏腹に慎重にならないといけない内容も多々含まれています。
 
そもそも介護とは、「生産性や効率化だけを求める仕事」ではありません。
 
介護の仕事は、根本として「人が人を観る」、要介護者の方を職員が「支援する」仕事です。
しかも、私たちが介護する利用者様の体調は刻々と変化しています。
 
その変化に対しては、どれだけICTや技術が進化したとしてもカメラや数値だけのデータだけでは、その要介護者の方の刻々と変化している変化に気付いて支援することは出来ないでしょう。
 
カメラやICTだけでなく、人間が人間を観る、観察するといった行為がとても大切なのだと思います。
どんなにICTが進化したとしても、認知症をもった、その要介護者の体調の変化に気付く事が出来るのは人間である介護現場最前線で働いている職員でしかないと思うのです。

 
もちろん、ICTを活用した生産性の向上を全否定している訳ではありません。
しかし、政府内議論で「ICTを導入して職員の配置基準を緩和する、減らす」といった内容はあまりにも現場を知らない極端な話であり、むしろ介護現場では、必要な人材が適材適所な数が配置され、健康面や人と人との関わりを大切にする質の高いサービスを生み出すことこそが重要だと私は思っています。
ICT活用は、あくまでその支援の手段のひとつでしかありませんし、それによって介護職員を減らしてしまうというのはあまりにも安易な考えだと思います。
 
こういった考え方は、今回導入されたLIFEについてもそうでしょう。
本来LIFEについても、事業所の加算を取るだけのものではなく、利用者様の生活の質の向上のための手段として活用するものであるはずで、単純な事業所の収益だけのものではないはずです。
 
今後政府では実際のところ、給付費の抑制を目的に、こういった「ICT」、「AI」、「ロボット」など生産性や効率化といった耳障りのよい方向性で議論が展開されていくはずです。
しかし現場から声をあげなくてはならないのは、介護サービスとは、あらためて「人と人の関わりそのもの」であり、目的は「そこから生まれる利用者様の幸せの実現」です。
 
私たちは「便利さ」というスクリーンの裏側にある本質、「本当に大切なものとは何か」という事を見失わないようにサービスを提供しないといけない思っています。

WELFARE,NO LIFE!
 
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