介護人材の離職問題

コラム

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走る施設長、現場発信!かくた充由です。
 
厚生労働省は16日、厚生労働白書のなかで「介護分野の職員の離職率」について言及しました。
白書のなかでは、介護職員の離職について前年度より0.5ポイント低下が見られましたが改善はされていないとありました。
 

この結果については事業所ごとにばらつきがあり、例えば小規模の事業所だとその離職が顕著、職員の定着率については大規模事業所と小規模事業所との2極化が生まれていることがはっきりとしました。
 
これらのデータから、時代は定着率、人材確保の分野においても益々、大きな施設や事業所が有利に働く傾向がある事がわかりますが、この傾向に甘えず例え大きな施設であったとしても、限られた介護人材、施設、事業所ごとに経営の資質が益々問われる時代になると思われます。

介護職員が離職を考えるきっかけとしては、介護労働安定センターの調査結果で多い順に「職場の人間関係に問題がある23.2%」「結婚、出産、妊娠、育児が理由20.4%」「理念や運営に不満がある17.4%」「将来への見込みがない16.4%」などとなっています。この他、「収入の低さ」や「転職」なども理由にあげられています。
 
では、離職率が高い高いと言われ続けている介護職の離職率は、全産業のなかでどれくらいの位置にあるのでしょうか。
 

例えば、同じく介護労働安定センターの調査結果(平成30年度)では施設、訪問などを含めた介護職の国内全体の合計値を見てみると14.6%です。これは最も多い他産業の離職率となっている宿泊業、飲食サービス業が26.9%、生活関連サービス業、娯楽業が23.9%と、全産業と介護職をあらためて比較してみると介護職の離職率は特別高いというわけではないという事が理解できます。

 


では次に、上位の離職の理由について掘り下げてみましょう。
 
まず離職理由第1位の「職場の人間関係に問題がある」についてですが、介護現場の業務というのは利用者様の支援にあたり、どうしてもチームプレイが求められます。
それには会議や情報伝達、コミュニケーション、なかでももちろん苦手な人間とも一緒に業務をしなければなりませんし、協力関係なしでは質の高いサービスをおこなうことは出来ません。
なかでも介護業界は女性の割合が多い施設や事業所も多く、人間関係が表面化しやすい部分もあるのかもしれません。

2位の「結婚、出産、育児が理由」について、介護職はこれらの結婚、出産、育児と両立しづらい仕事と捉えられている可能性も考えられます。
これは施設や事業所側の協力なしではその感覚は大きく違ってしまいますが、介護業界ではどうしてもそのシフト変更や休みから、産休や育休などの介護休暇を取りづらい環境があるのかもしれません。
なかには託児所を併設している施設などもありますが、全体でみればそれもほんの数パーセントですので、産休、育休をきちんと活用できる施設、事業所、またそれに理解のある施設であれば安心して介護の仕事との両立ができるのではないでしょうか。

3位の「理念や運営に不満がある」について、人手不足のなか、責任や不安に追われ現場で働く職員にとってみれば施設の理念や方針はその支えとなる大切なものです。
時代に合わせた改善がなされなかったり、あまりにも職員に声に耳をかさない施設運営がなされていたりすると不満やストレスを抱えてしまうケースもあるのだと思います。
定期的に職員と話をする機会を設ける施設や、1位にもある人間関係において職員間のコミュニケーションが取れており、自分の考えとともに一緒に職場を盛り上げ、利用者様に適切なサービスを提供できる環境にある施設においては不満も少なくなるのだと思います。

この他、「将来への見込み」や「収入の低さ」については、正直、施設側の運営努力と共に、政府の方針であったり、厚生労働省、財務省が大きく影響してきます。
介護業界は、1位から3位まであげた、特に不満や不安が溜まりやすい離職の原因の他にも、施設側の努力だけではどうしようもない要因が存在します。
 

これが解決しないことには、どんなに業界だけで質を挙げようと努力をしても介護、福祉の社会的地位は上がりませんし、働き方や将来への見込みや給与、処遇のアップも見込めないでしょう。
 
私たち業界全体が変わるには、現場、運営、政治、世論などまさに多面的、多方向からアプローチしていく事が求められています。
いまから介護、福祉業界には何が必要なのか、今回の離職問題だけを見るのではなく、すべての問題のジャンルは繋がっているんだという意識をもって私たちは日々の仕事に取り組みたいものです、頑張りましょう!
WELFARE,NO LIFE!
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