現場の声届けます!
走る施設長、現場発信!かくた充由です。
昨月6月16日、岸田政権が示す現在の重要課題や来年度の予算編成における方向性を示す、経済財政運営と改革の基本方針2023、通称「骨太の方針」が今年も閣議決定されました。
毎年6月頃に示されるこの骨太の方針は、その政権が国民に対しての今後の政策と国としての方向性がはっきりと発表される訳ですから、現在の日本の経済そのものにも大きな影響を与えることは間違いありません。
中でも、私たちが注目したいのはもちろん介護に関する内容が、どの様に骨太の方針のなかで「組み込まれているか」という事です。
今までも触れてきた通り、その内容は「人口減少が見込まれる将来に向けて、財政支出は出来る限り抑えて、今後、国として利益と効率性が見込める分野については推進していく」というもの。
つまり、今の岸田政権においては、「将来的に国の財源となる、税収の可能性を秘めている子供や若年者に対しては出来る限り予算を割いて応援」し、私たち介護など、全世代型社会保障制度のなかでも高齢者分野については「可能な限り財源の効率化を図り、国を支出を抑えていきたい」という事です。
更にその効率化を図るための文言として訳して読み取ると「質の高い介護サービスの提供体制を維持していくためには医療分野との連携、介護人材の確保と育成、働き方改革」なかでも「デジタル技術の著しい進展に対応した改革を進める必要がある」としています。
今までも介護分野に関する最大の問題である人材確保だけでなく、プラス、今後はAI技術やICT技術などをフル活用して介護の効率化を図る、図って欲しいという政府の思惑が見て取れます。
政府が進めている、こういったデジタル技術への関心、開発などについて現在意欲的に取り組んでいるのはというと、どちらかというと社会福祉法人よりも民間企業が浮かぶでしょう。
資本投資や意思決定が速い民間企業は、今後の介護業界のこういった骨太の方針からの事前情報や民間企業でおこなってきたマーケティング競争などを徹底的におこない、いまの社会福祉法人の運営のスピードをはるか上回る体制で、デジタル技術であるAI、ICT技術の開発を進めています。
もちろんこれは、日本の介護技術全体にとっては素晴らしい取り組みであることは認めます。
私がいち施設長としてつぶやきたいのは、骨太の方針など、こらからの政府の考え方が、今後の介護施設とスタッフに対して「救い」があるのかという事です。
歴史ある社会福祉法人もこういった流れに負けずに知恵を絞り運営に取り組まなればなりません。
政府と施設サービスは一体であり、当然社会福祉法人も出来得る限り、国の方針と同じように支出を抑え、効率的にこういったデジタル技術を今後施設に導入していけなければならないのでしょう。
しかし、こういったデジタル技術の導入には多くの資金が必要となります。
そして全国の厳しい施設の財政状況をみてみると、決して一概に「施設の努力不足」とも一概には言い切れません。
私は4年前の参議院選挙の候補者として全国の施設を飛び回りました。
その中で、様々な施設の現状を見せてもらい、その地域ごとの課題や問題、そして厳しい運営のなかで必死に努力されてきた施設長や施設スタッフをたくさん見てきました。
もちろん、決してどの施設も手などは抜いていませんし、すべてのご利用者さまへに向けて真摯にサービスを提供されていると見て取る事ができました。
加算についても出来る限り工夫をし、人件費、建て替えの費用も含めて事業継続に向けて取り組まれていました。
「現在の特別養護老人ホームの約4割が赤字である」とも言われています。
この数字をみると単に「それも施設の運営が悪い」と捉えてしまうかもしれません。
しかし、どの施設でもその地域での運営については、立地など地域の特性や、高齢化率や人口比率などを踏まえて精一杯努力されているものと思います。
もちろん業務負担軽減や人材確保、効率化のためにどの施設でも政府の言うデジタル技術は導入したいでしょう。
一方で、人材確保についても今やまともに募集をかけても応募がくるのは数ヵ月待ちなどの施設なども多くあり、今や人材派遣や人材紹介に頼り切りでそこでも莫大な支出が生まれてきている状況でもあります。
介護業界は実際のところ、今後、多くの問題を解決するのはこういったデジタル技術と特定技能を含む外国人雇用しかないのではないかと感じていますし、日本全体が一律として人口減少と超高齢化を背景に「すべて施設の努力不足」とするのはあまりにも情がないと感じてしまします。
今後は一定規模の施設を含めて、社会福祉連携推進法人制度などにより簡単にいうと施設同士の合併などM&Aのような考え方も自然と広まって来ることでしょう。
しかし信念をもってそれぞれに立ち上げた社会福祉法人、介護施設、お互いの理念や業務内容の違いの擦り合わせなど、果たしてそう簡単にいくものでしょうか。
最近の政府の動向や、こういった骨太の方針から見え隠れする内容は、あくまで個人的な感想としてですが、政府としてはこのまま人口が減少し、高齢者のみが残る2045年頃の社会に向けて、全国の赤字施設など「追いついてこられない施設をたたみにかかっているのではないか」とさえ感じてしまう事があります。
私はこういった赤字施設を切り捨てるような強引な進み方はあってはならないと思っていますし、政府、厚生労働省は、その地域に貢献してきた施設、社会福祉法人をその土地の最大限の拠点として、今後もその地域にあった活かし方をこの先もイメージするべきだと思います。
誤解を受けそうですが、今回の「骨太の方針2023」を見て、あらためて思うのは「最終決定は政治が決める」という事です。
これからスピードを上げて介護という仕事に価値を高める
のならば、「すべての介護の業界団体、職種が本気で束にならないと何も変わらない」という事です。
介護は横と縦、関わっている人間の数でいったら最大規模の勢力でもあり、介護業界は今でさえ眠れる獅子状態です。いつ眼を覚ますのか、それが来年の報酬改定がきっかけなのか。
いずれにしても自分たちの価値は自分達でしか変えられないのは間違いありません。
WELFARE,NO LIFE!
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