介護報酬改定は政府のバロメータ

コラム

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走る施設長、現場発信!かくた充由です。
 
来年の介護報酬改定に向けて、社会保障審議会および介護給付費分科会にて活発な協議がおこなわれています。
なかでも業界の人手不足、人材確保についてどのように対応していくかの問題については、最も重要なテーマであることは間違いありません。
 
厚生労働省は介護報酬改定について年末の決着に向けて具体策を固めていく方針だと思いますが、特定を含む、職員の処遇改善加算、ベースアップ加算など、どのような政策が決定されようとも必要な「財源の確保」がやはり最大の課題となるでしょう。

 

一方で業界で働く職員としては、進む日本の少子化と人口減少、そこへ様々な価格高騰が国民へ大きな負担になっているなかで、生活のために介護業界から離職し他産業へと人材が流れていく厳しい実態も今後さらに加速していくことが予想されます。
そうなると、来年の介護報酬改定の結果次第では、政府や施設が今考えている人材確保や定着とはかけ離れ、来年以降、大切な介護の人材がバケツの穴からどんどん流れ落ちていく現象がおこってくるでしょう。

 
来年の介護報酬改定で、政府が「介護に対してどれだけ本気なのか」ということを、私たち介護従事者だけでなく国民ひとりひとりもしっかりと注視しておく必要があると思います。

また政府は、財源や、特に介護人材に関しては3年ごとの改定だけでなく、今後2045年頃までを見据えた「日本の介護のグランドデザイン」を国民と一緒につくって「公表」していかなくてはならないと思っています。
 
「その議論を今やっているんだ」という声があると思いますが、実際に数十年前に「来るとわかっていた少子化問題」に関しても今の現状では解決には至っていませんし、介護や福祉に関しても、また「あの時にやっておけば良かった」という二の舞にもなりかねないと感じています。
 
2045年頃には今の第2次ベビーブームの団塊の世代の子供たち、つまり私たちの世代も後期高齢者となり、税収もさらに落ち、日本は高齢化したまま人口減少を続け、今以上に介護業界は厳しい状況になっている事は容易に予想できます。
 
時間がありませんので今回の議論が落ち着いてからでも、今だけの政権だけの考え方だけでなく、これから20年先もそこに働く介護従事者や、これからどのような政権になったとしてもブレない介護・福祉業界の方針を決定し、しっかりと地域で誰もが安心して生活して支える仕組みが出来るよう、今の高齢者の皆様にもわかりやすく方針を国民に公表してもらいたいと感じています。

これらの重要な決定には、国としても政策にバランスが求められますので、様々なステークホルダー(組織・行政・企業などで直接、間接的に利害関係を有する者)との協議が必要です。
そして、多角的なアプローチをするために国民をふくめたオープンな議論も必要になると思います。
 
介護や福祉の問題、特に財源に関するものは日本だけでなく多くの先進国で高齢化が進むなかで重要な課題となっているものが多く、いくつかの政策が議論されています。
 
具体的にはよく取り上げられるわかりやすいものとして「増税」「社会保険料の引き上げ」です。
 
消費税、所得税、法人税などを上げることで直接的に財源を確保することや、国民皆保険や年金など社会保険料を上げる事です。
現在の生活に直結する重要な政策ですので、政治的にも長期的にも大変デリケートで特に国民の理解が求められるものです。
また、介護保険制度や年金制度を民間企業と提携して運営するなど、ステークホルダーとの連携の強化も視野に入れてもいいかもしれません。
なかでも特に重要なのは、やはり社会保障費予算の優先順位の見直しでしょう。
 
現在、少子化問題や軍事費に予算が多く投じられていますが、他の予算から介護・福祉に予算をシフトしていくことは政治的にも非常な重要な決定となります。

また、これらを高齢者の皆様、国民全体に理解を求めるには様々なアプローチが必要となります。
まず、政府として全国民に対し、「何がいま問題となっていて、これからどう解決していくか」を明確に解り易くして公表することです。
背景と目的ははっきりしていないと政策は進まないからです。社会保障費は多くの財源が必要になりますから、政府がどのような方針で、財源を確保して、それをどのように使いたいか透明性を確保する必要もあるでしょう。
 
その他、具体的な数字や事例を使って専門家の意見とパブリックコメントで政策案を出す前に一般国民から意見を多く集める手続きを設け、メディアであるテレビや新聞、インターネットなどの情報提供を行い、幅広く政策の必要性と影響を説明をしていく事も大切です。
 
もちろん定期的に政策のモニタリング政策のフィードバックをおこなっていく事も重要だと思います。
 
いずれにしても、こういった政策を実行していくためには介護・福祉だけでなく社会の状態や今の政府の方針がとても影響してきます。
つまり介護・福祉の業界においても、国政で発言力がある私たちの代弁者となる政治家が次々と誕生してもらえる事が待ち望まれています。
 
社会が大きく変化していくなかで、私たちも政治、政策に関わる考え方も進化しなくてはなりませんし、来年の介護報酬改定は正に介護・福祉業界に対する政府の考え方のバロメーターがはっきりと出る結果となります。
 
しっかりと注視して、今の大きな変化のなかに飲まれないように私も日々努力していきたいと思っています。

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