「安心・安全で質の高い介護の実現」。その言葉に込めた思いについて、前回にもコラムで触れさせていただきましたが、今回はサブテーマとして掲げている3つの約束、その詳しい内容についてもご説明させていただきたいと思います。
「安心・安全で質の高い介護の実現」のために、私は大きく3つの約束を掲げています。
ひとつは、「安心感のある超高齢社会」。これは、前回のコラムでも大きく取り上げましたが、何はともあれ介護報酬の改善によって実現していくものだと思います。私は介護報酬の改善によって質の高い介護インフラを維持していくことが、超高齢社会においても安心感をもって生きていくために必須のことだと考えています。
そして、「食育、医食同源、農業生産の拡充」。いわずもがな、食と健康との間には、密接なかかわりがあります。たとえば低栄養状態や、嚥下の問題、心身を健康に保つさまざまな栄養素。食の楽しみが生きる楽しみにつながること。そういった食のチカラを、もっと介護に取り入れていくべきです。私の勤める社会福祉法人でも、農業生産法人としての事業も行っています。「食育」というと、子どもへの教育や家庭・地域でのコミュニティやイベントのイメージが強いですが、介護施設においても高齢者への食育、そして介護職員への食育に取り組んでいきたいと考えています。介護職員が食に対する正しい知識をもっと得て、それを活用していくことができれば、介護職の専門性がより高まり、介護の質の向上につながっていくのではないでしょうか。
第2に、「子育て支援、障がい者施策の充実」。現在、国では「一億総活躍社会」の実現に向けてさまざまな施策が行われています。その中には、出産・育児によってキャリアの断絶が行われる女性の働き方支援や、子どもたちの教育が含まれます。育児という意味では、男性の育児参加をめぐる問題も最近では話題になっています。やはり次代を担う子どもたちは日本の宝です。少子化、人口減少の進む日本で、子どもを産み、育てるという選択肢を安心して取ることのできる環境づくりは、超高齢社会への対応と両輪で進めていくべき課題です。
そして、多様性を認め合える全員参加型の「共生社会」づくりとして、障がいを持った方への支援も重要ではないかと考えます。私自身、福祉の世界に触れるきっかけとなったのは少年福祉です。高齢者福祉のみならず、福祉のサポートを必要とする方々への支援をいろいろな形で行っていくことが、誰もが輝ける社会をつくっていくことだと思います。
そして第3に掲げているのが、「魅力ある職場の実現」です。
人口減少社会においては、生産性をいかに上げていくか、これこそが2040年に向けての最も重要なキーポイントだと思っています。いま、介護業界は、一般の「3K」「4K」などと揶揄されるような、マイナスのブランドイメージがついてしまっています。介護をめぐるメディア報道において、そのような側面にスポットをあてたものが未だに多いというのも遠因ではないかと思います。
しかし、これは単にメディアが悪いというわけではなく、業界として一致団結して正しい発信をして来られなかった介護業界側の問題でもあると私は感じています。介護職はもちろん大変な部分もありますが、人とかかわり、人を変えていくことのできる素晴らしい仕事です。そういった介護職の魅力を伝えていくブランディングによって、介護職の地位向上につながればと考えています。そして同時に、働き方改革の浸透などによって働く環境そのものの改善も進めていかなければなりません。
私は介護職を長く経験してきた人間として、介護職が希望を持って働けるような職場づくりを実現したいのです。