【かくたの視点】環境によって人は変わる

コラム

現在、国では「働き方改革」として、多様な働き方の推進や長時間労働の是正に取り組んでいます。もちろん介護業界においても、この流れは浸透していると感じているところです。やはり、介護サービスの根幹は「人」。職員の皆さんの頑張りに報いるような「人を大切にする経営」が今、求められているのだと思います。そのために重要なのは、やはり職員の方がいきいきと働けるような環境づくりではないでしょうか。

 

私は、環境こそが人を変える、環境によって人は変わると考えています。そのことをお話しするにあたり、少しだけ私の身の上話にお付き合いいただきたいと思います。

 

私は幼い頃、両親が共働きということもあり、主に祖父と祖母が私の面倒を見てくれていました。いわゆるおじいちゃん子、おばあちゃん子という感じで、祖父と祖母が大好きでした。祖父・祖母、それから彼らのご友人である高齢者の方々が私に良くしてくれたことに感謝しています。そういったルーツがあり、「仕事で高齢者の皆様に恩返しをしたい」と考えるようになって、私の社会福祉はスタートしました。帝京大学で福祉について勉強をし、現場で20年、介護の仕事をしてきました。最初のころはデイサービスで送迎などをし、特養では夜勤も経験しました。それからケアハウス、居宅、包括支援センター、ショートステイも含めていろいろな事業に携わってまいりました。そして老施協の理事を務めさせていただくに至るわけですが、もうひとつ、実は高齢者福祉以外にも私のキャリアの原点があります。

 

子どものころ、実家では父が更生保護施設の事業をしていました。更生保護とは、非行に走ってしまった少年少女が更生するための施設です。そこで私は、多いときには15人くらいの少年少女と一緒に暮らしていました。

彼らが非行に走った原因は、ほとんどが「家庭環境」にありました。問題のある家庭環境からいったん離れ、更生保護施設で暮らして自分らしさを取り戻していくさまを私はこの目で見ていました。その後何年かして、社会に出て仕事をし、家庭を持って幸せになったと挨拶に来てくれる方もいました。

まさに、環境の大切さを子どものころに学んだわけです。

 

これは、高齢者福祉にも通じるものがあります。現在の高齢者福祉の生活・環境改善が、どれだけ人の尊厳や生き方に影響しているか。ここでもやはり、「人を大切にする」ということがキーワードになります。

そして、介護業界における職場の生産性の向上。これもまた、環境の問題なのではないでしょうか。働き方改革による職員の多様な働き方の推進も重要ですが、一方で環境づくりとして、施設側の運営改善も必要です。人口減少社会、働き手が不足していく社会において、どうやって人材を確保し施設を運営していくか。当然、どの施設でも取り組んでいる課題だと思いますが、そこには「働きやすい環境づくり」が絶対に必要なのだと思います。

 

公益財団法人介護労働安定センターの調査によると、2017年時点で66.6%の施設が「従業員が不足している」との回答をしています。これは4年連続の増加であり、介護施設の人材不足が深刻化していることを表しています。しかしながら、裏を返せば「33%の施設は人材を確保できている」と考えることもできるのではないでしょうか。

それが業態特性や立地状況によるものか、法人のマネジメントによるものか、仕組みによるものか等はケースバイケースかもしれませんが、ともかくそういった施設の取り組みや考え方を研究・発信していくことで、この人材不足問題の一助になることがあるかもしれません。